ママがおじいちゃんの娘に戻って、父との関係を取り戻す話をマレーシアに住む娘に届けたい。

 『ぐきっ』の原因は骨折だった。こんなに簡単に折れるのか? 折れるんですね。
それくらいの勢いでぶつけたんでしょう。

実は、足をぶつけた時、折れたな?という認識はあったんです。それが、父との約束を遅れたくない私は、平気なふりをして車の運転をして病院まで行った。
当然痛かったのですが、痛いという気持ちより先に、父を病院まで連れていくという事の方がはるかに大切で、不思議と我慢できていたんですね。(折れた方の足でアクセル踏んでましたもん)

父には特徴があって、裏道が大好きなこと、ハンドルを握ってすぐに思い出した。
父:あ~その道じゃない、そこ行くと混むから、ダメダメ。
私:でも、ナビだとこっちの道、案内してるよ。

そうだった、黙って人の車に乗れないんだった、父は、、、、
いつもの私なら、父の言っていることを完全無視して、自分の考え思うままに行動するのだが、痛い足が私を冷静にしているのか?

私:じゃ、今日はお父さんの案内してくれる道を試してみようか??

と、父ナビの通り走った。

あら、以外、かなりのショートカット、それに、その道沿いの川に桜が咲き、春は素敵な穴場になることなどを知った。

父の案内によって、時間を短縮できた私たちは予定より早く受付することができた。

私:ちなみに私もレントゲン撮っていただくことできますか?
受付嬢:大丈夫ですよ、どの先生がご希望ですか?
私:加藤先生が父の担当医です。
受付:承知しました。お待ちしていただく可能性がありますが、加藤先生で受付しますね。

ラッキーにも、待ち時間がそれほどかからず、レントゲン写真を終えた私は、父より先に診察に入ることができた。

加藤先生:『折れてまんな~、ここ、わかります。しばらくゆっくりですな~』
私:ヒールは、しばらくお休みですね。
加藤先生:ヒールよりなにより、足休ましたらな あきまへんわな~
私:先生、どれくらいでヒール復帰できます?
加藤先生:2.3か月はかかるんちゃいますかね、、でも、ちゃんとひっつきますから、、、

先生は、足を休ませる話をしているのに、折れている説明をしているのに、ヒールに固執する患者だなと驚かれたことだろう。

診察は、以上の短さで終わり。後は、どうして足をぶつけてのか?とか父のことを話をして診察室を出た。

この後、父が呼ばれた。
加藤先生:レントゲンみても、血液検査の炎症反応も見ても、何にも悪いとこありませんわ。
むしろ、順調ですよ。安心してください。
父:そうですか?私、歯が痛くなって、歯医者の痛み止め飲んだ後から足が痛みだしたので、 歯医者からでた鎮痛剤飲むのやめたんですが、それでも痛くて。
加藤先生:歯の痛み止めが、足に影響することはありませんから、痛ければ薬飲んでいいですよ。後は、腰が要因なのかもしれませんな。

私は気が付いた。先生の話と父の話はどこまで行ってもかみ合わないだろう。なぜなら、先生は医者であり、足の付け根の手術の担当医、だから、足の話をしている。いっぽう父は、足の手術以降の不安からありとあらゆる不安が体の不調を引き出し、気持ちの弱さが勝り、いたるところに痛みを創りだしているのだから、、、、。

あ~、父には通訳の人間がいるんだ。日本語と日本語の通訳って、、、おかしな話でも、父には通訳がいる。先生が大阪弁でテンポよく話をするのを、たくさんの語彙を遣い再び父がわかりやすいように時間をかけてゆっくりと説明しなおす必要がある。

加藤先生:お父さんの足は順調で、むしろ娘さんの足の方が重症ですよ。
これは、先生のユーモアたっぷりの父への励ましの言葉だったと思う。

長い間、私は父が物分かりが悪い人間だと決めつけてきた。それが今日、そうではなくてそれぞれの特性によって同じ場所で、同じことを聞いたり感じたりしていても、理解や感じ方が違う事を知った。
母とは、同じスピードと理解があり、様々な事を共有することがいとも簡単だった。
だから、私は母とたくさんの話をし続けてきた。
正直、この年になって父のことを改めて理解し始めている、理解しようとしているのかもしれない。

後、父と娘の私、どれくらいの時が残っているのだろうか?

娘に戻り、父との関係性を取り戻し再び父を知りたいと、今は心から思っている。

そのための、小指の骨折なら、『幸せな痛み』だといいきれるのではないか?!

 

この記事を書いた人

アバター画像

喜稀今日子

3人の女の子の母親です。葬儀社の経営の仕事をしながら子育てと地域活動に参加しています。忙しといいながら、プライベートでの新しいことへのチャレンジは必須です。
新しい発見を発信していけたらいいです。
喜稀 今日子(きき きょうこ)

詳しくはこちらにどうぞ。